「FlyFishingは哲学だ!」

今シーズンも抑え切れない衝動に駆られ、またここに来た。
          まだ冷たい空気に吐く息も白い…


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 明けきらない朝もやの立ちこめる湖面に立ち、ゆっくりとロッドを振る。
しなやかに伸びたラインは弧を描きヒュッという心地良い音を残し静か
にフライがプレゼンテーションされる。ふわりとフライが湖面に落ちて
軽く波紋を立てた。その瞬間静かな湖面はバシャッと音をたて獲物がフライ
に喰らいつく。軽くロッドをあわせる。一瞬の銀色の影は、水中へとを
ラインもろともフライを引き込む。グッとロッドにテンションが掛かり柔
らかいロッドは、弓のようにしなる。グリップを握る腕にも心地よいテン
ションが伝わる。魚との静かな戦いが始まる…。


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フライフィッシングは、哲学だ。たんに魚を釣るだけではない。自然との一体
感を味わうことが出来る。もやの立ちこめた湖面にウェーディングしている
と冷たい空気と木々の香り、自然の優しい力を体全体に感じる。朝日が射し
込んでくると景色はしだいに変化し、とても綺麗だ。そんなフライフィッシ
ングにのめり込んだ私は、静かな自然の美しさとちょっとだけ大物を夢見て
釣りに出かける。ヘミングウェイも開高健もフライフィッシングは、やらな
かったようだ。もし彼らがフライフィッシングをやっていたらまた違った
小説も出来たのかもしれない。


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フライフィッシングは、今まで私がやってきたどの釣りより繊細で、
そして上品な釣りだ。私は、釣りはどんな釣りでも好きだが、フライフィッ
シングは、その中でも特に好きな釣りだ。人間は、漁以外に釣りを娯楽とし
て取り入れ楽しんで来た。魚を釣るという一見単純な行為だが、その奥の深
さは、釣りを愛する人間なら理解できるだろう。時代と共に道具は変わって
きた。ロッドとリールは機能的にも優れたものが出てきた。材質や機能が変
わっても基本的なスタイルは変わっていない。竿とリールと釣り糸の基本条
件は、変わらない。

他の釣りとフライフィッシングの大きな違いは、ラインの性質だろう。
フライフィッシング以外の釣りは、竿のしなりを利用して細いラインの先端
は、おもりがありラインの先端の重さを利用して餌をポイントに運ぶ。基本
的に釣り糸の一番先端が一番重いのだ。

だが、フライフィッシングは、おもりは一切ない(細かく言うとあるのだが・・・)。
そこが他の釣りと全く違う画期的なところだ。何故なら細いラインの
先端は軽いフライなのだ。
もし、おもりがあったとしたら軽いフライは、水面に浮かぶ事が出来ない。
フライは、とても軽く鳥の羽で作られている。そんな軽いフライをどのよう
にポイントに運ぶかフライフィッシングは、上手く考えられている。フライ
ロッドとフライラインが一体となって軽いフライを遠くに飛ばすことが出来
る。フライを飛ばすと言う表現よりフライをそっと“運ぶ”という表現の方
が妥当だ。最も重要な物は、フライラインだ。

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ストリーマー

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ドライフライ


そのラインの性質と形状だ。ムチを思い浮かべれば大体想像できると思うが
そのムチの先端に細い釣り糸がついていて、その先端にフライが付いてると
考えれば大体想像つくだろう。フライフィッシングは、ライン自体がフライ
を飛ばす推進力となるのだ。リールの事は述べなかったがフライフィッシン
グもリールは、必要なものだ。しかし、バスフィッシングは、海釣りで使う
ようなリールではない。とてもシンプルでただラインを収納するだけと言っ
てもよい。リールでのやり取りは、あまり無いのだ。


山女(ヤマメ)


岩魚(イワナ)

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「フライフィッシングは、哲学だ!」のタイトルは、難しい講釈を垂れたい
と言うことではない。フライフィッシングをする釣人の誰もが持っているそ
れぞれの釣りに対する拘りとでも言ったところだろうか。

                        つづく…かもしれない


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