Carefree Field

その人の家族（姉）によると本だけが自分を見出せるくらいに本に囲まれた生活
をしていたそうだ。私は２度ほど本人に会ったことがある。大学での専攻は哲学科だ。
その大学と言えば世間では超一流と言われるところだ。
だが、その本の虫がある日、あるきっかけでぱったり本を読むことをやめた。
そればかりか今まで読んでいた全ての本を処分してしまった。
今では、一切本は読まない・・・・。と言っている。

その人いわく本は、“悪”だと言うのだ。今まで散々本を読破し、愛していた人が
本を完全否定する。私があまり本を読まないと言うと
その方が良いとその人は言い切る。
何がその人をそこまで変えたのか？概ねきっかけになることは知っている。
その人が言うには、一言で「欲」を捨てる事だそうだ。そのため本はそれを
阻害する何かがあるのだろうか・・・。

同世代（同学年）の人には、世の中ではそれなりに社会的地位のある立場にいる。
と言うか殆ど一線から引退する世代だ。
恐らくその人もあるきっかけがなければ社会的、経済的に何不自由ない
生活を出来ていただろう。だが、その人は逆にそんな人は不幸だと言う。
欲を捨てた生活は傍目で見ると不自由な生活に見えるのだが・・・。
周りの親戚一同からはの大きな期待と尊敬は地におち「アレはバカだ」と
言われるようになったそうだ。
だが、その人の親族（姉）に言わせると、あの頃（本をこよなく愛している頃）より
今の方が幸せに感じると言う。とにかくあの頃は精神的にぼろぼろだったと
言うのだ。多分、唯一の理解者はお姉さんだろう。

他にも色々伺ったが本を捨て去る事とそれを納得する理由を私には
理解できなかった。それに人間、欲など完全に捨て去る事など出来るのか。
私には生きる存在理由すらなくなるような気がする。その人は、欲を捨て去った時に
必要最小限の生活が出来き幸せな人生をおくれると言う。
その点についてはほんの少し同意できる気がする。
だがそれがその人なりの幸せな生き方なのだろう。